アサナとくつろぎ


「今、ここで」
ポーズ(アサナ)をいくつか作った後、少し長めのくつろぎのポーズをします。音楽もかけないでただ5分から10分くらい仰向きになります。寝てしまう人もいます。それはそれでいいと思っています。そしてこんな誘導をします。
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今を大切にしてください。具体的には呼吸です。鼻を通って胸やお腹が膨らみます。又小さくなっていくのを感じて下さい。からだの重さを感じてください。うまくいけば体の温かさも感じられます。背中の柔らかさも感じます。
これはリラックスすることで「今を気づき」、感じが得られるのです。禅の世界、お茶の世界で「一期一会」があります。これも「今、ここで」を大切にする考えです。これは「自分が生かされている」という考えでもあります。野に咲く花に感じ入る自分の状態、家族やまわりの幸せにひたるひととき。これも今を気づきそして生かされていることを意識している姿です。

しかし、これだけで私たちは生きていけません。「生きる」という営みこそが人間本来の姿であり他の動物と違うところです。
生きるとは過去を反省し、又栄光を味わい未来を夢見、予測し操作することです。そしてこれが文明、社会を作ってきました。生きる力が強いとは生命力が強いということです。それはすばらしいことです。
ところが予測ができないこともあります。コントロールできないこともあります。仕事でストレスを感じることも多くなっています。人間関係もそうです。思い通りにいかないことが多いのです。そこに緊張感が現れ、生きることに不安を覚え、生命力の弱さが出てきます。

そこで他の動物と同じように原点に戻って今を生きてみる。今を生きることでいのちの働きは本来のいのちの姿にもどっていきます。それは神経のバランスを取り戻し、からだの内分泌のバランス、免疫系の活性化が新たに作り直されていきます。力を抜いて今の自分を深く見つめて下さい。
具体的には呼吸です。そしてからだの重さです。体の温かさです。背中の柔らかです。これがリラックスを導きます。
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「慌てるということ」
アサナをつくるときや他の動作でも同じですが「慌てる」ことがあります。慌てるとは心が今でないのです。心が先にあって今をおろそかにしています。思い込みが激しいことも同じでしょう。そんな時「地に足を付けて」といいます。これは今を大事にしている言葉です。
開脚前屈のときなどは「尻を床に付けて下さい」といいます。尻が床についていることを実感すると上体の力が抜けてアサナをつくりやすくなります。スキのポーズをつくるときは背中が床に着いていて柔らかいことを確認します。この仰向きになっていれば背中が床に着いていることなど当たり前のことなのですがこれを敢えて確認するのです。ここで脳にしっかりと確認させてやらないと脳はいつも慌てて先を急いでしまいます。

「セルフ1、セルフ2」
今年の札幌南高の野球部のヨガ練習は「インナーゲーム」という本を使いました。アメリカのガルウェイという人のテニスを題材にしたメンタルトレーニングの本です。セルフ1という存在とセルフ2という存在があってセルフ1という口やかましい自意識が本来、すばらしい能力を持っているセルフ2の力を削いでいる。セルフ2をもっと信頼せよと言っています。セルフ2は無意識の存在でうまくやろうという人間本来持っている力であります。この本を読んでいると同じようにセルフ1が「生きる力」セルフ2が「生かされている力」というように思えます。心を静かにしているとセルフ1が消えてセルフ2の姿が現れ、緊張や力みがなくなって本来の力が出るといいます。生命力の強さ、内在智を信じましょう。

「梵我一如」
生かされている力、生きる力は梵我一如の世界でもあります。古代のインドのウパニシャッド哲学に説明されています。梵とは宇宙のことで梵の中に自分がいます。すなわち生かされている存在です。我は当然、自分のことです。梵があっての自分があり、自分があっての梵があります。死んでしまったら意識がないのですから梵は存在しません。梵と我が一つものだという考えは現代を生き抜くうえに参考になるところ多大です。
今を生きるとは生かされている自分をありがたく見つめることに他なりません。
ヨガの方で「生きる力」のことをアートマンといい、「生かされている力」をブラフマンと言っています。この協調関係こそ現代をたくましく生きる術なのでしょう。

「そして再びアサナとくつろぎ」
アサナを作る、十分にくつろぎのポーズを作る。そして再びアサナを作る、そしてくつろぐ。このようにして神経組織を深いリラクセーションに導いていくことで生命の活力が生まれてきます。アサナだけではだめです。くつろぎだけでもだめです。アサナは生きる力、くつろぎや瞑想は生かされる力なのです。
(2002-03-23)
参考1.くつろぎの公式

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