生命力強化法 2

<あいだみつをの詩>
---自分の番---
うまれかわり
死にかわり永遠の
過去のいのちを
受けついで
いま自分の番を
生きている
それがあなたの
いのちです
それがわたしの
いのちです
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生物が進化をするのを見たり考えたりすると、私たちがどんなにすばらしい存在かがわかるし、そして現在の私たちの不安を取り払う方法やより良く生きるためのヒントが見つかる。
生命は同じものに分裂するという生殖から有性生殖(雄と雌)になって命の継続、子孫の繁栄を優先するようになった。そしてこの有性生殖は親のコピ-ができるのはなく、異質な多様な遺伝子を持つ子供ができる。そのために子供、子孫は環境への適応能力が素晴らしくできるようになった。子孫を残し続ける強い意志を持った命、地球上の過酷な環境への適応力を持った命は太古から受け継いだ遺伝子が持っている本能であった。これは有性生殖をしている動植物を問わず現存している生物、全てに当てはまる。
どのようにして生物が進化していったかは 「生命の歴史-生命即神」に書いた。

サケの産卵やウミガメの産卵のドキュメントを見ていても子孫を残す作業は壮絶である。それは今を生き、次を生かすことを組み込んだ本能なのだ。
生きるということの本能は陸上に上がってからも、脊椎動物も営々と続くことになる。

人類を見たとき、過去からの遺伝子の集積がいたるところで見られる。急に背骨が出来たわけではない。突然に卵生から胎生になったわけでもない。改良を重ね続けていったのである。適応するためによりきびしい環境に適応していった。

細胞分裂をする胎児の変化は地球上の生命誕生の30億年を経過していくと言われている。受精後1ヶ月経ったときからその後の一週間で魚の時代、両生類、爬虫類、原始ほにゅう類の形を経ていく。また私たちの脳も進化の過程で昔の古い脳の上に新しい脳を積み重ね、組み合わせていくことをしていく。

脳には脳幹、大脳辺縁系(大脳旧皮質)、大脳新皮質と大きくわける。この中で生きるという機能を持つのは脳幹(中脳を含む)である。脳幹は自律神経、免疫、ホルモンの働きをコントロールしている。それらは魚やヘビにも備わっている。そして進化していって、快不快の気分を表わす脳の機能が大脳辺縁系に見られるようになった。これは脳幹の上部にある。そして人類は異常な奇跡的な進化をして大脳新皮質(前頭葉)を持つようになった。これは大脳辺縁系にある。そしてここは知能をあらわし、他の動物にない能力、すなわち予測と制御を行なう働きをする。大脳新皮質という膨大な記憶装置のもとで自らをコントロ−ルし、他の生物、地球までをもコントロ−ルするようになり、母なる自然から今、羽ばたいて離脱しようとしている。それは良くも悪くもである。素晴らしい文明、科学、快適さをいくらでも求め、実現する能力を持った。そして自ら、自然の存在、一部であることを忘れてしまった。そしてそこから先進諸国の高度の文明を持った人々の悩みが新たに浮かび始めた。

それは、脳を原因とする問題である。ストレス、ノイロ−ゼ、そして、自律神経失調、免疫不全(アトピ−、ガンなど)が当たり前のように口に出される。最新の医学であっても何の解決にもなっていない。全て対症療法的に処理しているに過ぎず、あとは生命力、自然治癒力にたよっている。今までの生命の歴史を見れば当たり前である。自然から生まれた人類は生命の創造主には決してなれないのである。

人類は太古からいつの間にか進化の頂点にたってしまった。しかしいくら文明が進んでも母なる地球の中でしか生きられない存在である。そして私たちが自然界の他の生物と同じレベルであることに気がつくべきである。生活の快適を求めることで、私たちはヘビの脳のように生き抜くという強い生命力の中枢、脳幹部がひ弱になってしまっている。その上の情動を司る辺縁系は犬猫などに発達している素直な気持ちを表わす神経組織でもある。これが麻痺して、体の声を聞こえなくなって、ノイロ−ゼ-を引き起こしてしまう。大脳という装置が下部の大脳辺縁系、脳幹との連携がうまく働かないのだ。大脳が混乱しているのだ。そして新皮質の判断する能力まで鈍くなり命の弱さが目立ってくる。大きな命の歴史の中で「生きる」と言う本能が文明の快適さと引き換えて、脳幹の弱さとともに、消えうせつつあるのだ。たくましくあることが生命力そのものである。私たちは自然界から困難さや飢餓や身体的苦痛という刺激を与えられ、それを乗り越えてきた。すばらしい能力。まだまだ適度な刺激さえあれば生命力は回復するのである。

ヨガの体操の中に普段、やらないような動きがたくさんある。そしてポ−ズや呼吸法などで脳に刺激を次から次へと与える。脳幹も辺縁系も新皮質にもたくましく生きるために刺激を加えているのである。楽しく、気持ち良く、そして時にはきつく刺激を与える。悲鳴を上げてもいい、最後は生命力がうまく対処していく。リラックスして命の声だけを聞く耳が必要だ。命そのものが工夫して解決してくれる。

ヨガの一通りの行法(ポ−ズや呼吸法や発声法、瞑想など)はきつそうに見えていてもを終えたあと、気分がいいのだ。それは命が喜ぶと表現している。命はいつもたくましく生きようとしている。気分がいいということは脳幹も生き生きし始める。意識的にポ−ズを作り瞑想し、笑い、そうすることで脳幹、大脳辺縁系が強くなっていく。私たちの脳はヘビの脳、ネコの脳もつまったたくましい脳である。

進化は元に戻ることが出来ない。原始社会に戻ることは出来ない。それなら蓄積された人類の知恵で体が持っている自然性をもっと発揮すれば良い。たくましくそしていつも謙虚に自然の恵みをいっぱい受け入れよう。昔からヨガのことを東洋の英知と言われている所以(ゆえん)である。
(2002-07-18)

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