背ぼねを柔らかくする


大黒柱。大黒柱は毎日の生活ではあまり実感のない言葉になった。この言葉からどっしりした印象をもつのだが家の中にはもうこれが大黒柱だよという柱が見当たらない。建材で隠れたり、柱のない構造やコンクリ−トの家が多くなったのだ。お父さんは大黒柱か、これも存在感が無くなってきた。お母さんだって大黒柱だから。

しかし、体にはしっかりと大黒柱がある。歩く、立つ、這うときは、背骨の動きが中心だ。手、足、頭の骨はすべてこの背骨に依存し、つながっている。いや心臓や腸などの内臓さえもこの背骨にぶら下がっている。内臓が背骨で固定されていなかったら、運動しているうちに膀胱が口元に来たり、心臓が骨盤の中に埋まったりして不都合なことが多すぎる。

背骨がすごい働きであるのはまだある。体中の神経の束が背骨の中にあることだ。顔周りの顔面神経などを除いて体はすべてこの背骨の中の神経を介して感じ、そして動かしているのだ。その神経は硬い骨で守れている。背骨(椎骨の重なり)が自由に動く反面、動かなくなると押し付けられて神経麻痺になる。手足がしびれる、だるいという症状が出てくる。

そういうことでこの背骨をいたわり、柔らかく、強くしよう。ヨガのポーズはこの背骨を調整するものばかりだ。背骨は強じんな棒のようにしなったり、くつろぎのポーズで寝ているときはくさりが床に置いてあるように背骨は緩んでしまう。緊張弛緩、伸縮自由自在が良い背骨だ。

尻歩きというのがある。足を伸ばして尻で歩いて、前進したり後退したりする。これは前に「腰と膝の関係をよくする」に書いたことがある。この動きをすると腰も膝も柔らかくなる。背骨がねじれることで背骨が柔らかくなり、体全体が緩むのだ。

赤ちゃんが「這い這い」する動きは画期的な動きだという。赤ちゃんをベビーサークルに入れて育てると背骨の発達が悪くなるそうだ。もう今はベビ−サ−クルはなくなった。元気な子に育てたいときは立ち上がりそうになったら無理しても転がせと聞いたことがある。

そしてこの這い這いの動きは脳の働きを活発にさせるという。天才といわれた競馬の福永洋一という騎手がいた。彼は落馬して頭のけがで人事不省になったがドーマン法という過酷なリハビリテーションで(最近は天才詩人6歳の日木流奈で有名になった)かなりの回復があったという。このときの訓練法の中心が這い這いなのである。当然、自分で移動が出来ないからその場で4人が手足を交互に動かすわけである。

この「這い這い」はヨガ道場で20年も30年も前からやっていた。頭が良くなる方法と聞いていたらもっとまじめにやっていたのにと今になってみると残念である。脳幹を刺激し生きるという無意識部分を活性化する訓練だ。脳の構造は生物の歴史をたどるように頭の中につまっている。当然、ヘビの脳もそこにある。このヘビの脳を活性化するのがこの訓練方法だ。ヨガのポ−ズもこの脳幹を刺激する。ヨガをすると生命力がつくことは間違いない。

それにしてもこの大黒柱の背骨を柔らかくすることは体全体のつながりを良くする方法だ。寝たきりでは元気になれない。ゆっくりでいいから時々尻歩き、這い這いをやりたいものだ。他にもネコのポーズで四つ這いで歩いてみたり手足を伸ばして歩いてみたりというのは体がかなりほぐされていく。疲れているときや肩が痛い、腰がだるいというときに背骨を動かすとかなり解消する。やればの話だが。。
(2002-10-01)

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