ヨガの道徳的訓練−ヤマ・ニヤマ
ヨガには道徳的訓練ヤマ・ニヤマから始まって精神的訓練の最高位サマージまで八つの段階がある。これを八支則という。肉体的訓練を行うアーサナ、呼吸法・食事法のプラナヤーマ、そしてとらわれないという意味の禅を意味するディアーナを経て、三昧を意味するサマージである。「山川草木悉皆成仏」という言葉があるが、サマージとは自分と他のあらゆるものとが結ばれて喜びを得る状態のことをいう。俗に使われるのは道楽三昧、釣り三昧など狭い範囲での楽しみの表現であるが、これを生きるという範囲に広げたのが「三昧」なのだろう。アーサナ・プラナヤーマ、ディアーナなどはサマージにいたる訓練なのである。

新聞に「仏教の道徳」という記事があった。ヨガのヤマニヤマの説明にふさわしい内容であった。ヤマはやっていけないこと禁戒、ニヤマはすべきこと勧戒 である。ヤマ・ニヤマはどちらも道徳的訓練だが一方は低位の訓練であり、他方は高位の訓練である。

すなわちヤマは「やっちゃいけないよ」という警告である。殺生や暴力そしてうそや盗み、邪欲はいけないよという教えである。子供に諭すような教えである。ニヤマは「徳を身につけなさい」という奨励である。すなわち、心を浄化し、満足を知り、真実を求め、学習し、神を祈りなさいという教えである。畜生と異なる人間としての教養である。

「仏教の道徳」の記事には日本人の道徳的退廃を深く憂慮するものであるという書き出しである。現代の日本では指導的立場のある人ほど、「バレナキャイイ」とか「ジブンダケイイオモイ」という傾向で新聞紙上をにぎやかしている。記事の中ではニヤマの部分、布施をしなさい、耐え忍びなさい、そして精進しなさいとある。これら三つの徳の教えが明治以後、世界有数の富裕な国にした。しかしその徳は衰え、日本人が持っていた美しい心がまさに崩壊しようとしている。この徳を取り戻すことが緊急課題であるという。
 
(2005-06-24)


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