ヨガの呼吸法の実践(プラナマーヤ)

ゆっくり呼吸すると気持ちも動きもゆっくりになります。せかせか呼吸すると落ち着きがなくなります。息が浅いと元気がなくなります。このように呼吸にはこころの状態が表れまたからだの状態も表れます。
種々の呼吸法をすることで自律神経をコントロールし生命力を効果的に発揮します。プラナヤーマとは宇宙に存在している生きるためのエネルギー生命素=プラナを体に取り入れる方法のこといいます。食事法もまた同じくプラナヤーマです。
プラナは宇宙に循環しているものであり、身体中にプラナを流すことで気力が充実し、まだまだ眠っている生命力を呼び起こす妙法です。呼吸法は息を入れることだけでなく、もう不必要になったものを出すこともそれ以上に大事で体が浄化されていきます。
プラナヤーマを行うことで感情が安定し、自律神経・内分泌系・免疫系のバランスが保たれます。又腹圧が強化され、筋肉や神経が発達し、内臓が強化されます。また胸が広がることで姿勢が矯正され呼吸器が強化されます。緩急含めた自由自在の呼吸法によって血液の浄化や心肺機能を高める効果は絶大です。

 

 

1. 自然呼吸法 2. 腹式呼吸法 3. 胸腹式呼吸法 4. 長音発声法 5. 短音発声法
6. 完全呼吸法 7. クムバクについて 8. 逆式呼吸について 9. リズム呼吸 10. バストリカ
11. カパラバーティ 12. ナディショーダナ 13. スカアプルバク 14. スイッタリー 15. ライオンの呼吸法

 

1.自然呼吸法

○普通の呼吸の仕方で自然に呼吸をし、吐く息、吸う息ごとに胸・腹背中腰の脈動を感じるか、または鼻孔に意識を集中します。
○呼吸をまかせる気持ちで、自分の呼吸を心がけることがこつです。
○自然呼吸でもこのように意識して行うことによってプラナヤーマになります。
○これを行っているとき自分と宇宙普遍の生命力を結び付けるイメージを描きます。精神力が強くなり集中力が高められます。

 

2.腹式呼吸法

○横隔膜を使い、腹を風船に見立てて、膨らましたり、すぼめたりして、ゆったりと行います。
○腹の筋肉をゆるめて吸い、下腹を締めるようにして吐いていきます。プラナが下肺の深いところまで達します。意識はミゾオチの太陽神経叢に置きます。深いリラクセーションが生まれます。
○骨盤の中に空気を送り込むと肛門や仙骨部までも膨らみ骨盤内臓器の血行もよくなります。骨盤隔膜の柔らかさを生み出します。マタニティライフには必須でしょう。

 

3.胸腹式呼吸法

○一呼吸の中で腹式と胸式で呼吸法をします。
○腹で吸い、続いて胸で吸い、続いて少し止めてクムバクを行い、次に腹を閉じて吐いていきます。
○肺全体にプラナを送り込む呼吸法で、胸に送り込むとき、下肺、中肺、上肺と意識しながら行い、上肺に達したときそこから息をもらすような気持ちで軽く息を止ます。そして次にからだ中から発散するような気持ちで息を吐き出します。
心肺機能を高めます。ただしあまり長く行わないこと。長くするときは以下にある完全呼吸法を行うと良いでしょう。

 

4.長音発声法 (マントラ行法)

○「あー」「おー」「んー」と一息の中で長く、発声します。
○「あおん」は「オーム」と発声することもあり、宇宙の根源的な音、生命そのものの音、ひびきです。
○「あー」の音は心身がくつろぐ状態、「おー」は緊張する状態、「んー」は統一力、生命力発揮の状態を作り出します。
○この三つの音を連続的に発声します。繰り返すと自律神経のバランスがとれて心身の安定に効果があります。

 

5.短音発声法

○あいうえおの順で「あっ・いっ・〜・・ろっ」までを大きな声で短くきって発声します。
○それを繰り返えします。急速に腹が収縮することにより腹筋が鍛えられ、内臓の強化にもなります。

 

6.完全呼吸法

○胸腹式呼吸法の要領で吸息、保留息、吐息の割合を1:2:2で行います。(理想は1:4:2の割合です。普通は5:20:10ですが徐々に長くしていってもよいでしょう。16:64:32秒の人もいましたが。)
○保留息(クムバクという)は、息を止めることでそしてこのとき丹田に力を込めます。これは生命力を喚起させ、呼吸法の中で一番、重要で基本となります。

 

7.クムバク(保留息)について

たいていは吸ってから息を止めます。そして首のところに力が入らないように止める瞬間に肩の力を抜いて腹に意識をおき、クムバクの間、腹を練るように力を入れておきます。クムバクは効果の大きい方法ですが間違うと血圧を上げて事故になりかねません。
また深くて早い呼吸法をやっていて気分が悪くなるときがあります。この時は過呼吸(かこきゅう)になって血液の酸素濃度が高くなっている(炭酸ガス濃度が低くなっている)ので、息を長く止めていると簡単に治ります。精神的ストレスによる過呼吸で気分が悪くなったときもこのクムバクをすると落ち着きます。

 

8.逆式呼吸について

息を吐くときに腹を引っ込めるのが腹式呼吸ですが、腹を出す場合があります。スポーツや武道などでは力を入れるときこの呼吸をします。動物でも唸っているときがそうです。状況によってこの呼吸法は間違いではありませんが、リラックスを求めるときや深い呼吸を行うときはこの逆式では行いません。この逆式呼吸は瞬時の動きにとってはすばらしい呼吸法ですが戦闘体勢ではない、平静のときもこれを行っているといつも腰に力が入っているため腰痛の原因になります。腰といえども普段は緩んでいた方がいいようです。

 

9.リズム呼吸

○この呼吸は吸う息と吐く息を同じにしてリズミカルに行います。
○吐く息と吸う息の長さを同じにし、吐く吸うの間に間を置かないようにします。
○意識は眉間のアジナチャクラ(悟りの座)に置きます。
○出来るだけ深く呼吸します。
十分なリラックスが得られます。

 

10.バストリカ

バストリカとは、鍛冶屋が鉄を鍛えたり加工したりするときに火を起こすのに使う「ふいご」のことで、これで炎が強くなります。
○間を置かず、急速に吐く吸うを繰り返します。
○20回行った後はクムバク(息を止める)を行ってから静かな自然呼吸に戻ります。
バストリカの呼吸は肺の浄化法で、体内の汚れたそのものを取り除き、心臓、肺、横隔膜を強化し、無気力さを解消します。鼻の機能が高まり、心の働きが活発になり、体のほかの部分も正常に働くようになります。

 

11.カパラバーティ

カパラは額のことで、パーティは光のことです。このプラナヤーマを行うと脳細胞が活性化されるといわれています。
○吐く息だけに意識し、吸う息は自然にまかせます。
○自然に息を吸っておいてから、下腹部に吸収させて一瞬に息を吐きます。
○吐き切ったところで間をとると、自然に吸う息に変わります。
○意識は眉間に固定し、鼻と下腹部以外の体は動かさないようにします。
○20回行った後はクムバク(息を止める)を行ってから静かな自然呼吸に戻ります。
このプラナヤーマは出産のときのラマーズ法に応用できます。繰り返すことでリラックスし、腹圧が高まってきます。腹筋の弱い人もこの呼吸法で行うとよいでしょう。またヨガのポーズの最中に集中が必要なとき、痛くて緊張に移行しそうなときこの呼吸法をするとうまくいきます。

 

12.ナディショーダナ

ナディは動脈、静脈、その他の流れを作っている管状器官のことです。ショーダナは浄化のことですから、ナディショーダナは体内の管を浄化することを意味します。血液、リンパ、気の流れの経絡、養分などが流れやすくするための呼吸法です。
○右手の親指を右鼻、人さし指と中指はアジナチャクラ、薬指は小指を添えて左鼻に当てます。
○右鼻を閉じて左鼻から息を吸い、左鼻を閉めて右鼻から吐き、吐いた右からすぐ吸って閉め、左から吐きます。
○これを間を置かずに素早く繰り返します。

 


13.スカアプルバク

○右手の親指を右鼻、人さし指と中指はアジナチャクラ、薬指は小指を添えて左鼻に当たります。
○右鼻を閉じ左鼻から息を吐き、左から吸い、両鼻を閉じて保留息。右鼻から吐いていきます。割合は完全呼吸法と同じです。5回くらい行います。
老化を防止し、新陳代謝を活発にし疲労を取り除いてくれます。

 

14.スイッタリー

口から呼吸をする唯一の呼吸法です。
○舌を丸くして口から出してストローのように唾をすするように音を立てて息を吸います。
○そして舌を引っ込めてクムバクをします。そして息を吐きます。長さの割合は完全呼吸法と同じです。
緊張しているときは唾液の出が悪いのは周知のとおりです。赤ん坊でもよだれがたくさん出るのは元気な証です。唾液をコントロールしてリラクセーションを導きます。又この呼吸法は飢えや渇きを克服する方法だといわれています。

 

15.ライオンの呼吸法

ライオンの威厳さを象徴する呼吸法です。
○正座、またはその他座法から手を膝に押し付け、指を開いて上半身を支えます。
○息を吐きながら舌を大きく出し、目を開きうなじを伸ばします。
○息を吸って上半身を元に戻し、再度行います。5回続けて行いましょう。
この呼吸法はがく関節の矯正にもなります。舌を強く出すことで下がくが動きやすくなるからでしょう。
首の緊張もなくなって顔周りがリラックスします。ヨガのポーズのときに行うとポーズがやりやすくなります。スポーツ選手が時々ここ一番というとき、舌を出すのはこの辺の事情でしょうか。